【連載】暴行・セクハラ暴言事件@一橋大学ーー悪に対して中立であることは何を意味するか? 第1回 袴1号と袴2号、第一の暴力
11月1日、私たち大学解体連盟東京支部と協力者は一橋大学西本館にいた。二つの目的があった。シンポジウム「日本軍「慰安婦」問題とどう向き合うのか」(Yoいっしょん)に参加して学習すること。もう一つは、翌日の【第二次】石原慎太郎講演会@一橋祭反対声明ーー抗議行動のよびかけ【転載転送拡散歓迎】 - 催涙レシピを宣伝するビラまきを行うことであった。26番教室に到着したのは12:30ころだったろうか。その後、数時間にわたり、私たちは人権侵害を経験することになる。
以下に書くのはその顛末である。動画などの物的証拠はここでは示さないが、事実にあたる事項に関しては私たち自身の言動や例外的な匿名の情報源を除いて、必ずXは○○と言ったとか、YによればZはxxをしたという書き方をしてある。つまり、確認ないし反証に開かれていることに留意していただきたい。たとえば、以下に登場する袴一号の言動は、如水宝生会に問い合わせることができる。なお、この文章には暴力と性的侮蔑の表現、そしてさらに深い苦しみの場面が登場するので注意されたい。
26番教室受付で、私たちはビラまきの許可を求めた。会場内ではご遠慮願いたいということであったが、入り口付近でのビラまきは快く承諾してくれた。この場所を選んだのは、翌日の石原慎太郎講演会問題に関心をもってくれそうな人が集まると思ったからだ。
しばらくビラをまいていると、一橋祭運営委員がやってきて、ビラまきを禁止すると通告してきた。根拠を尋ねると、回答を拒否された。ただ「お願いします」の一点張りである。他に撒いている人もいますよと指摘すると、あれは全て祭に関連のあるもので、さらに政治的内容のものは一切認めていないという。大学に積極的意義があるとすれば、その一つは自由に政治的なビラまきができることである。この常識に反することを例外的に要請するのであれば、根拠が示されなければならない。ではあなたが立つことを禁止するので座ってくださいお願いしますと言うと、苦笑いされた。じゃあお互い様ですねということで、ビラまきを続けた。
シンポ教室入口は一つなので、複数の人員は必要ない。シンポスタッフは、別の教室付近でも分担してビラまきをすることを勧めてくれた。そこでAは、同じ西本館24番教室(一橋新聞と卒業アルバムにみる戦争と一橋生)付近でビラまきを始めた。しばらくするとその教室から出てきた人より移動を要請されたため、Aは25番教室(一橋宝生会・如水宝生会)付近に移動した。
すると、一橋宝生会・如水宝生会の袴姿の男が、排除を意図してか、Aの背中をドンと小突き、Aは体が前に出た。これに対して、Aは「私の体に触らないでください」と言った。するとそばにいた別の男が、「誰がお前の汚い体なんて触るか」と声を荒げた。「日本語がわからないのか」という暴言も聞こえてきた。男たちは最後まで名乗らなかったので、さしあたり、登場順にそれぞれ袴一号、袴二号と呼ぶことにしよう。後になって、私は肖像権があることを承知していると告げた上で、公益性と犯罪性を重視してこの男たちを撮影した。
ここまでが長く苦しい一日の第一幕である。これが第一の暴力だった。この暴行やセクハラ暴言について価値判断するために、これ以上のいかなる説明も飾り言葉も必要あるまい。
というわけで、話を先に進める。
Aは一橋祭運営委員の岡本まゆ香(おかもと・まゆか)に事情を説明し、対処を要請した。時刻は間もなく13時になろうとしていた。このとき、「慰安婦」問題シンポ教室付近にいた私は、Aの様子を見に「一橋宝生会・如水宝生会」教室付近に移動してAと合流した。その時点で私は事の次第を把握した。塩川雄基(しおかわ・ゆうき)運営委員も加わった。Aは同じことを塩川に話した。
A:対処お願いします。
塩川:あ、はい、じゃあ注意しておきますー。
A:注意じゃないです。
私(常野雄次郎(つねの・ゆうじろう)):注意ってことじゃなくて、犯罪ですよ。
塩川:あでも我々もあなた方に注意した・・・。
私:関係ないでしょ!
A:私は、手は出してませんし。
塩川:今ビラを配られていて。
私:たとえば犯罪者に対してだったら何をやってもいいってことですか? そうじゃないでしょ。
塩川:どういうことですか?
私:私たちが、あなたたちのルールに従わなかったからといって、私たちが[袴たちから]被害を受けてもいいっていうふうにはならないの。あなたが言ってることめちゃくちゃですよ。
塩川:いやでも、まあ、我々もだからそれを厳重注意しておくという・・・。
A:厳重注意ってどういうことですか? [キャンパス]構外でしたら、私が警察に届けたら、警察が出てくることですよ。犯罪なんですよ。
私:とりあえず捕まえてくださいよ。だから、私たちは暴力をふるえないので。
塩川:わかりました。いや、じゃあちょっとすみません、ここに・・・。
私:特定しましょう。その男性。
塩川:いやここで、ビラ配布をされていたというのを伺ってきたんですけども。
A:ええ。
私:ちょっとその問題もういいので。
塩川:いやもうよくないです。
A:いや私、どうしたらいいんですか? こんな暴力振るわれたままで。
Aは悲痛な声をあげた。
このままではどうしようもない。犯人も逃げてしまうかもしれない。
そこで私たちは、自ら宝生会の教室を覗き込んで、加害者を特定することにした。ところが、中にはたくさんの袴男がいて、Aには見分けがつかなかった。
連載第1回は、ここまでにするとしよう。この文章は、私が文案を作成し、話し合いによる修正を加えて公開するものである。私の怠惰や、現在入院中であるといった事情によりこれから先も時間がかかるかもしれない。
第2回に向けて、一つの問いを立てておこう。
もし、あなたが電車内で痴漢被害を訴える人をみかけたとする。実際に可能かどうかはともかく、そのときすべきことはなんだろうか? あるいは、あなたが駅員だとする。ある人が、この人から痴漢されましたと言って男をつきだす。男はその事実を認める。あなたはどうするだろうか? あなたの同僚はどうするだろうか? 上司は?
そして、もしあなたが「痴漢はいいことだと思いますか? 悪いことだと思いますか? それともどちらでもないと思いますか?」と問われたとする。なんと答えるだろうか?
さらに、今度は自分が被害者だったらと仮定してみよう。誰も何もしてくれない。放置される。ニヤニヤしながら傍観される。そしてこう言われる。「いいとも悪いとも思いません。中立です」。どの駅員からも。どんな、どんな、ねえ、どんな気持ちになる?
この連載は、あくまでも事実を報告することを目的とする。ただし、ところどころ上のような想像が必要となる。事実の意味を理解するために。
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大学解体連盟東京支部は、この連載の終了をもって解散する。もしこの事件についてなんらかの対処をすることになった場合は、新団体を立ち上げる。それまでの連絡先は、以下の通りである。
「もし」と書いたが、対処できるのか、どう対処するのか、できないのかということは、ひょっとしたらこの連載にどんなリアクションがあるのかないのか、読者からどんな人が現れるかにかかっているのかもしれない。現在のところ、私たちは孤立し、傷つき、疲れていて、どうしたものか途方にくれている。
p.s.
さまざまな形でこの連載を拡散してください。よろしくお願いします。